検診で異常を指摘された
尿が濁っている
おしっこがにおう
排尿時に痛む
尿検査で尿が濁っているといわれた
「小児尿路感染症と膀胱尿管逆流」
【尿路と尿路感染症】
尿路とはおしっこを作る腎臓、尿を体の中にためておく膀胱、その間を結び尿を腎臓から膀胱に運ぶ尿管、尿を膀胱から体の外に出す通り道である尿道からなっています。
尿路感染症は細菌(ばい菌)が体外から尿道を通って、尿路に侵入し繁殖することによっておこります。菌の侵入が膀胱までにとどまれば熱の出ない無熱性尿路感染(大人でいう膀胱炎)といい、菌が腎臓まで達すると、38度以上の高い熱を伴う、有熱性尿路感染(大人でいう腎盂腎炎)となります。
ここで述べる尿路感染とは、主に有熱性尿路感染のことです。有熱性の尿路感染症は入院が必要なほど重症化してしまうことが珍しくありません。さらに、腎臓にとりついたばい菌はこどもの腎臓に傷をつけ(これを腎瘢痕といいます)、その機能を落として行ってしまいます。
【有熱性尿路感染症と尿路の先天異常】
有熱性尿路感染は一歳未満では男の子に、一歳以上では女の子の方に多いですが、いずれの場合にもその背景には尿路の先天異常のある場合が多く、その場合尿路感染症は再発しやすくなます。代表的な先天異常としては次のようなものがあります。
1)膀胱尿管逆流症
2)先天性の水腎症
再発する尿路感染により腎臓の機能が落ちていくのを防ぐためには、有熱性尿路感染症を繰り返すお子さんでは超音波検査と膀胱造影検査によりこのような異常の有無を確認しておくことが勧められます。膀胱造影検査を受けさせるのには少し覚悟が入りますが、感染を繰り返して腎臓が傷ついていくまで検査を受けないのもやはり避けたいところです。
また、尿路感染をまだ起こしたことがない子供でも、超音波検査で腎臓にはれが認められる場合には逆流がその原因となっている場合があり、検査をおすすめする場合があります。
【膀胱尿管逆流とは】
尿管と膀胱のつなぎ目は、いったん腎臓から膀胱におりてきた尿がまた腎臓に戻らないようにする弁の機能を持っており、ばい菌が膀胱の中にいても普通は腎臓まで達することはありません。膀胱尿管逆流症とは、この弁機能が未成熟なために膀胱の中の尿が腎臓の方に逆流することで、腎盂腎炎を発症しやすく腎臓にダメージを与えていきます。
【二次性の逆流】
また、元来つなぎめの異常がなくても、異常な排尿習慣や膀胱の神経疾患のために膀胱の中の圧が異常に上昇しておこる逆流もあり二次性の逆流と呼ばれます。その場合は排尿そのものの管理が重要です。
【診断方法】
排尿時膀胱尿道造影
膀胱の中に造影剤を入れて行うレントゲン検査です。この検査により逆流の有無とその程度がわかります。
【RI(アイソトープ)検査 】
腎臓のシンチグラフィー(略して腎シンチ)ともいいます。造影検査で逆流があることがわかった場合に、左右の腎臓の大きさと、腎臓についた傷(腎瘢痕)の有無の診断のために行います。
【治療方針について】
治療方針はこどもの年齢、逆流の程度、尿路感染症の頻度と重症度、腎臓へのダメージの程度とその進行、保存的治療の経過、などを総合して考えていきます。
1)保存的治療法
多くの場合こどもが成長するとともに尿管と膀胱のつなぎ目は成熟し、逆流の程度は軽減していきます。そこで、造影検査を1、2年おきに繰り返して経過を見ていくことになります。逆流がある間は、有熱性尿路感染の発症を防ぐために抗生物質を長期間にわたって一日一回少量服用します。それでもその予防効果を乗り越えて尿路感染を起こしてしまう場合には手術療法が勧められます。
2)手術療法
下腹部に約4-6cmの横切開をおき、尿管と膀胱をつなぎ直す手術です。
対象は、1)逆流の程度が強いとき、2)予防的抗生剤を投与しても重症の尿路感染症を発症するとき、3)腎臓へのダメージが大きいときです。保存的治療法で、中程度の逆流が最後まで残存した時にも考慮する場合があります。最近はおなかを切らずにおこなう腹腔鏡下手術も選択されることがあります。
3)内視鏡手術
尿管と膀胱のつなぎ目に補強剤を内視鏡下に注射する方法です。つなぎ直す手術よりも根治性に劣り、麻酔は必要ですが、傷が残らずすぐに退院できますので開腹手術よりもはるかに簡単です。